タイムカプセルを開く旅へ:日本の玄関口、東京駅丸の内駅舎の夜明け
皆さま、こんにちは!「JAPAN思い出BOX」へようこそ。
今回は、まるで絵葉書から抜け出してきたような一枚の古写真をご紹介します。そこに写し出されているのは、日本の近代化の象徴であり、多くの人々の旅立ちと帰りを迎えてきた「東京駅丸の内駅舎」の、まだ幼い頃の姿です。
今から約110年前、大正3年(1914年)に華々しく開業した東京駅。この写真に写っているのは、その竣工間もない頃の丸の内駅舎だと考えられます。現在の、多くのビル群に囲まれた賑やかな丸の内駅前広場からは想像もつかないほど、広々とした空間が目の前に広がっているのが分かりますね。
ルネサンス様式が映し出す夢
まず目を引くのは、その堂々たる外観です。設計を手がけたのは、日本近代建築の父とも称される辰野金吾。彼がイギリス留学で培った知識と感性、そして日本の風土に合わせた工夫が凝らされています。
左右対称に伸びる壮麗なレンガ造りの建物は、ルネサンス様式を基調とし、当時としては最先端のデザインでした。南と北に配されたドーム状の屋根は、現在の復元された姿とは異なり、八角形のドームがそびえていました。このドームが、まだ空が広々と見えた当時の東京の空に、どんな風に映っていたのか、想像するだけでもワクワクします。
中央の少し高くなった部分は、かつて貴賓室や中央玄関があった場所。ここから多くの要人が駅舎に入り、日本の近代化を推し進めていったことでしょう。一つ一つの窓、レンガの積み方、装飾に至るまで、当時の最高の技術と美意識が注ぎ込まれていたことが、写真からも伝わってきます。
空間が語る物語
この写真の魅力は、建物だけではありません。駅舎の前に広がる、まだ手つかずの広大な土地にも注目してください。現在の東京駅前は、整備された広場やオフィスビルが林立し、多くの人々が行き交う大都市の心臓部ですが、この写真からは、まだ未来への可能性を秘めた「余白」が感じられます。
当時は、駅から少し離れるとすぐに畑や空き地が広がっていたのかもしれません。舗装されていない土の地面、まばらに見える街灯のようなもの、そして遠くに見えるまだ低い建物群。これらが、当時の東京が「これから発展していく都市」であったことを雄弁に物語っています。
写真の片隅に写る小さな影は、もしかしたら当時の最新の乗り物である自動車でしょうか?それとも馬車かもしれません。当時の人々の交通手段や、この広場をどのように利用していたのか、想像が膨らみます。
記憶の糸をたどる場所
東京駅丸の内駅舎は、関東大震災や第二次世界大戦での被災など、数々の困難を乗り越え、その度に復興を果たしてきました。この写真に写る姿は、そうした試練を経験する前の、まさに「夜明け」の姿です。
この一枚の写真から、日本の近代化の息吹、そして大正時代の空気が伝わってくるようです。私たちは、この素晴らしい建築物を通して、当時の人々の夢や希望、そして活気を感じ取ることができます。
「JAPAN思い出BOX」は、これからもこのような貴重な古写真を通じて、皆さんの心の中に眠る「古き良き日本」の思い出を呼び覚ますお手伝いをしていきます。
次回も、また別の「思い出の風景」でお会いしましょう!
参考資料:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/
1936(S11)明治大正建築写真聚覧 https://dl.ndl.go.jp/pid/1223059
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